こんな話にして欲しかったのに〜!という、感動作なノベライズ版「Return
of the Joker」を、RINKOのスーパー・ヘボ翻訳で大紹介!!
あの淡白な何気ないシーンの奥に隠された、真実を分析してくださいマセ。
なお、テリーの一人称に関しては、「ボク派」「オレ派」に意見が分かれるかと思うのですが、ワタシの独断により、今回は「オレ派」でGo♪ 声のイメージは、セキ・トモカズかな〜とか思うんですけど……まァいいや(笑)
◆ボクがBATMANを続ける理由
場面:Batcave。
40年近くも前に死んだはずのJokerの突然の出現に、困惑するテリーとブルース。けれど両者の胸中をよぎる思いは、まったく異なっていた。当時の状況を問い質し真相に迫ろうとするテリーに対し、意外にも師であるブルースは、唐突な言葉を突きつける。
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ブルースは、峻厳な声で呟いた。
「スーツを返してもらいたい」
テリーは師の顔を見て、呆然となった。予期せぬ言葉に、我が耳を疑ってしまう――。
本能的に手が、肩に掛けたバックパックのストラップを強く握りしめる。
それでもどうにか、混乱の中から声を絞り出した。
「な……何でいきなり? どういうこと?」
「もはや続ける意味もないだろう」
穏やかだが、頑とした厳しい声音が応える。
「おまえは父親を謀殺した連中への報復を成し遂げた。それからも、救いを求める街の声に応じてきた。ましてや、BATMANという名を、これまで以上に栄えあるものにしてくれたんだ……心から感謝している」
「はあ? それなら、どうして返せだなんて言い出すんだ?」
未だショックから抜けきれずに、尋ねるテリー。
ブルースはテリーから離れると、険しい目をBATMANやROBINのコスチュームが飾られたショーケースへと向けた。
初代ROBIN――ディック・グレイソン。ブルースは孤児になった彼を引き取って、BATMANのクライム・ファイティング・パートナーとして育て上げてきたまでの過程を思い出す。
また、ティム・ドレイク――2人目の養子をROBINとして訓練し、そんな彼らを解雇した彼なりの心情をも思い起こした。
「おまえに、この生活を押し付けたのは間違いだった。いや、おまえだからでなく、他の誰であろうとも間違いだった……」
「ちょっと、ちょっと! 忘れたのかい? おれは自らここに忍び込んで、Batsuitを盗み出したヤツなんだ。あなたに押し付けられたからクライム・ファイターを続けてるってワケじゃない」
テリーはブルースに念を押して、更に畳みかけようとする。
「そりゃあ確かに、きっかけはオヤジが殺されたことがあったからだけど、それからはBatsuitを着るってこと自体が多くの意味を持つようになってきた。ブルース、これまでおれたちは違う世界に生きてきたし、おれって人間は、あなたやあなたが雇っていた(←ROBIN)誰とも違うんだ。おれなりの意味があって行動してる。一緒にしないでくれ」
テリーはこれまでの戦いに思いを馳せて、遠くを見るような眼差しになった。
彼はこれまで、自分の過去を、他人に正直に話すことなどしなかった。
また、そんなふうに考えることさえも一度たりともなかったのだ。
ブルースが顔を向けると、テリーは先を促すサインを送る。
「おれは昔、とんでもない悪ガキだった。よーするに、非行少年ってやつね。ロクデモナイ連中とつるんで暴走するは、違法行為にゃ手を出すは――当然、親を泣かせるだけ泣かせた。イカれてたんだよ。あなたは、2発のパンチで人生を棒に振っちゃうようなヘマなんて、やらなかったろ?」
テリーの遍歴を聞かされたブルースは次第に苛々してきた。
何が言いたいのか、と無愛想に突き放す。
「おれは過去の間違いを償いたい。少年院で過ごした3ヶ月の後、おまえは立派に更正したって言われた。でも、そうじゃない。そうじゃないってことを、自分自身でわかってる。その証拠に――あなたは恋人のオヤジの視線を気に留めたことなんてないだろ? 始終、【悪ガキ】だって目で見られるんだぜ。そうじゃなくても、学校で何かやらかそうものなら、【前科者】呼ばわりされる身だってこともよくわかってるよ」
テリーは淡々と続けた。
「Batsuitを着ればいつだって、困っている人々を助けられるチャンスだ。他人がどう見ようがどう言おうが、おれにとってはBATMANでいるときは、自分が価値がある人間なんだって感じていられる」
テリーはこれまでにないほどの熱心さで、自分の意志を師に示した。
ブルースの賢明で、慎重なな判断を何より尊敬していたから。
だからといって、かつて彼がBATMANだったときにどう感じていたのかまでは、理解の及ぶところではない。
「おれはそういう道を自ら選んだんだ――これはおれの望んでいることなんだよ、ブルース」
「……ばかな子だ。自分が何を望んでいるかも知らないで」
ブルースは苦い顔をして、背を向ける。
吐き捨てたその言葉には、やり場のない不満と見えない怒りが満ちていた。
「おまえたち(*)は、みんなそうだ」
徹底的な拒絶を突きつけられたことで、テリーは声もなく唖然となった。
やがてその表情が、ショックから怒りへと変貌し、憮然となる。
黙ったままバックパックを肩から外すと、出し抜けにそれをフロアに放り投げた。
床に投げつけたれたはずみにバックルが外れて、ブルースの足元にBatsuitが吐き出される。
テリーは猛然と階段を駆け上がり、瞬く間にBatcaveを、ウェイン邸を後にした。
床に広がった黒いBatsuitを凝視し続けるブルースを、愛犬エースが怪訝そうに見遣る。
そんなブルースには、何かを見失ったような虚無感が漂っていた。
*)ここで「気付いてくれよ〜、テリー!」と叫びたい。ブルースは、過去に育てたサイドキック(相棒)たちが、いかなる末路を迎えたのか知ってるだけに、テリーも彼らと同じ道を辿ってしまうのではないかと懸念して、彼なりに苦しんでるのです。テリーを自分の過去にまつわる因縁の巻き添えにはしたくないという強い思いが表れている葛藤のシーンなので、胸を打ちます〜。なのに、本編ではとても淡泊で…泣けてきた。なんじゃい、アレ。あれじゃ、ブルースはただの意地悪で横柄なジジイだし、テリーの切実な訴えはクソ演技呼ばわりされて、フォローも出来ない有様じゃーん。
◆ラスト・シーケンス
場面:ゴッサム病院。
入院中のティム・ドレイクを見舞って、バーバラ、テリーが顔を揃えている。
穏やかな病室に、訪問者がやって来た。
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ドアの方で物音がしたので、皆がそちらへ顔を向けた。テリーが近づいて、ノブを引く。
「ブルース!? ……ここで、何してんの?」
「アタリマエのことを訊くんじゃない」
右手にしっかりと杖を握って、ブルースが病室内へと入ってきた。まずはティムの方を向いてから、不意に足を止めて、テリーを振り返る。
「おまえが言っていた言葉を、ずっと考えていたよ。やはり、おまえは間違ってる。【価値ある人間】にさせてくれるのは、何もBATMANじゃない。他の方法がいくらでもある。二度とそんなおかしなことを考えるな」
テリーは師に、緩やかに微笑んだ。
「あァ、そうだ。……そうなんだよね」
それが彼の返事のすべてだった。それが彼の言うべきすべてだった。
ブルースはゆっくりと部屋を横切って、ティムのベッドの傍らに立ち、心を込めて告げた。
「元気かい、ティム?」
ティム・ドレイクは、かつてとても大切だった人を見上げた。そのときに、35年間の歳月が隔てた互いの大きな溝は、跡形もなく消え失せていた。
「やあ、ボス」
ティムが手を伸ばすと、ブルースはそれをしっかりと握りしめた。
それを見ていたテリーは、歳月が過ぎ去ったことを感じた。ブルースや、ティム、バーバラを残して、足早に病室を後にする。
彼らの間柄には、長い歴史と、これから取り戻すべきたくさんのものがある。
病院の動く歩道を移動しながら、テリーは別の病室へと向かっていた。胸が早鐘を打ち始める。ディナを想うときは、いつもそんなふうなのだ。
テリーにとって、人生における大切なことは、BATMANとしての務めを成し遂げること。また、恋人であり、息子であり兄である「テリー・マクギニス」を続けることも、まだまだ必要なのだとわかっている。
『すべてが然るべき時に』
今でも亡き父・ウォーレンの言葉が、耳に聞こえてくるようだ。
その言葉の意味は、今なお、はっきりとわからない。けれど、まさにこういうことなのかもしれないと、漠然とテリーは思った。
テリー・マクギニスにとって、BATMANの生活は決してたやすいものではない。それでも彼が、他の道を望むことなどないだろう(*)。
*)最後のセンテンスは、冒頭部分で「テリー・マクギニスは、ラクだと思ったことは一度もなかった」から始まってることを受けて、それに対する韻を踏んでいます。「Return〜」では、テリーの亡父・ウォーレンの存在にはほとんどノータッチなので、ラストにチラと使う演出がニクイなあと思った次第。ちなみにテリーは、重度のファザコンである(と言っちゃうと身も蓋もないので、愛情深い息子ってコトで)。
それにしてもブルース&ティムの再会には、もう一捻り欲しかったのぉ。あれでティムファンは許せるのかなァ?! しかも本編中のティムの扱いときたら、あんまりじゃん! あれがディックだったなら、ワタシは号泣してしまったでしょお〜ッ!(つーか、許さんゾ。あァ、やっぱり何があっても登場しないで、NIGHTWING!)
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