■  ススメ! BATMAN読書隊  ■

 
ジョーカーの逆襲/表紙

クレイグ・ショー・ガードナー著
竹書房(1992年)

 



1992年というと、T.バートンの映画が話題になっていた頃。
映画第一作目のノベライズの後に、竹書房から発行されたのが、この【ジョーカーの逆襲】です。原題、Return of the Joker かな?と思ったら、やっぱり違った。それだと、【ジョーカーの復讐】(それでわSW…)の方がピッタリだネ☆

BATMANのアンソロジーとか読むと必ず思うことは、時代設定がスンゴイばらばら、です。
この作品では、JOKERによる罠で2代目ROBIN=ジェイソンを殺された失意のBATMANが、半ば自棄になってクライムファイティングに精を出している頃を舞台に描かれています。雰囲気的には1980年代前半ちっくかな。

ここでのBATMANは、自覚はないんでしょうけど自棄になっているモンだから、すぐに怪我をするし、ちょっとした判断ミスも生じる。日頃の慎重な(クライムファイターな)彼からは、考えられないような、情緒不安定から来る危険な状態。そんな彼の中には、ひとつの葛藤が渦巻いていました。
「なぜジェイソンは、死ななければならなかったのか?」
自分が助けに行くのがもう少し早く、爆発前までに間に合っていたら?
そもそもディックがROBINを辞めなかったら、分別もつかない未熟なジェイソンにROBINを継承させることもなかった。
否、彼に出会うことさえなかったろうに。
気の毒に、その出会いがあの少年の人生を狂わせてしまった。
そもそもどうして、ディックはROBINを辞めたんだっけ?
……辞めさせたのは私だ。
でも追い出すようなことまでは言わなかったはずなのに、彼は大学も放り出して勝手に出奔したんだ。
原因を掘り下げれば堀り下げるほど、それは自分自身に帰結して、幾度となく傷ついていくBATMANの精神、ブルースの心。そんな痛々しいまでに傷心の彼を、周囲の誰にも救ってあげることができなくなりました。唯一、彼を苦しみから退けてくれるのは、絶対的な使命である「悪と戦う」ことだけ。癒せる術は何もないけど、皮肉にも傷を広げずにいられるのは狩るべき「犯罪」が自分を支えているから。
ゴードンも、アルフレッドも、遠く離れてしまったはずのディックも、親しい友の窮状に心を痛めます。
そんなある日、ゴッサムシティにはBATMANの格好をした奇怪な死体が発見されることが相次いで……しかも死体のそばには必ず、黄色い造花の薔薇が。
ゴッサムシティに生まれた新興教団、幾度となく続く著名人の行方不明とケープをまとった騎士の格好の死体――謎のキーワードが交錯する中、BATMANはゴードンの要請で自分の格好をして殺された男達の調査を始めます。そして、その仕事をNIGHTWINGとして独立したディックに協力してもらえるよう連絡をとりますが、この申し出を彼は冷たく拒絶するのです。
これがビックリ、なんと単なる親子喧嘩のもつれで、ディックはそーとー頭にきていたかららしい!(お子ちゃまディ〜ック☆激ラブ)

BATMAN曰く、
パパ:「おまえはジェイソンの葬式に来なかったな〜ぁ(ねちねちイヤミ)
ディック:(教えてくれなかったくせによく言うよ!←でもコレを口に出さないところが大人……仕事があって来られなかったんだ。ぼくを責めないでくれ」
パパ:「おまえは運が良かったから、ジェイソンのようにならずに済んだんだ〜ぁ(激イヤミ)
ディック:「
(むむむっ)……だいたい素人のジェイソンをROBINにした事自体、間違ってない?」

パパ:「何ッ? 結局、全部私のせいか?!」

あとは呆れるほどの殴り合い。……ボカボカ殴っちゃうんです。子供の喧嘩です。バカっぷり親子全開!……あ、あめーじんぐ。
そんなわけで実は、タイタンズに休職願(?)を出して、フリーになったディックはブルースの心配をしに密かにゴッサムシティに里帰りしていたものの(妻に先立たれた父を案ずる子のキモチ?)、父はあまりに頑固すぎました。
話をすればするほど険悪なムードにエスカレートし、ついにディックは接触するのを断念したというわけです。
けれどもBATMANがあまりに気弱になっていたので、ついつい情に流されて、一度は断った仕事を自分から受けてしまいます。(フホホ、根が甘いからのぅ)
早速ゴードンの指示で、新興教団「永遠の幸福教会」への潜入捜査を開始しますが……ディックに潜入捜査なんて出来るワケがありません。ゴードン本部長は適材適所という言葉を失念しています。しかも相手は宗教団体。数と質が強力なのです。
案の定、浅慮なディックは、教団内の「セミナー」にヤラれておかしくなりました。公開パーティだけに出席して様子を探ったらすぐ帰る予定だったのに、ちっとも戻ってこないから関係者が心配し始めた頃、死ぬような思いをしてどうにか自力で脱出!(エライ)
その頃には、教団のトップがJOKERと関わり合いがあることが明らかになります。
どこかにJOKERのアジトがあるはずだと、ゴッサムシティ中を探し回るBATMAN。
JOKERの狙いは?
BATMANの格好をして死んでいた著名人達に一体何があったのか?
これらすべてはジョーカーの遊びで、多くのBATMANを作り、多くのJOKERと対決させたらさぞ楽しかろうという腰砕けな思いつきでした。改造された男達は、自分を本物のBATMAN、あるいはJOKERだと信じ込み、行動を起こしてしまうのです。そしてJOKERの手に落ちたディックも、彼のコピーとして改造されてしまうのでした。(やべえ、今回のディックってば、脳味噌持久戦!! キツイ)
以下、この本の中で一番笑えた部分を引用。

ディックがまた行方不明になり、誰もが黙り込んでいた。

……また、です。またですよ、ディック坊ちゃま!!
1冊の本で、2回も行方不明になってるンですよ!
学習機能付いてないンですか、いや〜ん、もうアンタって子はッ!(この本の中では、21歳という設定)
あまりの不出来さに可愛すぎて、噴き出してしまったワタシ。これだからブルースも、ディックが可愛くてしよーがないんだろうなあと、ちょっとBATパパな気持ちになれる迷作です。どこか古本屋さんや図書館で見かけたら、是非手に取って見てくださいネ。


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